去年も大みそかに「手紙」のことを書いたなあと思いつつ
今年の大みそかも「手紙」のことで締めくくります。
嬉しい事に、店の名前を「carta」(ポルトガル語で手紙の意)にしてよかった
と思う出来事が度々あります。
少し前の、午後のお茶を飲みたくなるような時間でした。
女性がおひとりでご来店。
帰りがけに、笑顔で「ゆっくり手紙が読めました」と
声をかけてくださいました。
秋に亡くなった父からの長い長い手紙でした、ずっとなんとなく読めないで
いつも持ち歩いていたのですが、この店に入った瞬間「ここなら読めるかも」
と思って手紙を取り出して、ゆっくり読む事ができました、と。
流れていたピアノの音楽もじんわりと優しくて、音楽の中で父の手紙を
心から味わう事ができました。
とその方はおっしゃいました。
そんな大事な時間になっていたとは。
こちらこそありがとうございます、というのが精いっぱいで
「cartaは手紙という意味なのです」と咄嗟に出てこないくらい嬉しい出来事。
そのことをお伝えしたかった!とあとから気づいたのですが
伝えないでも十分だったのだろうな、とも。
その方は「音楽もこの手紙を読むのを後押ししてくれました」と
そのときに店で流れていた、ヘニング・シュミートさんの「walzer」も
お持ち帰りされました。
手紙を読んだ時間の気持ち、記憶、そういうものがまたふとしたときに
お客さまの生活の中によみがえることがあったら嬉しいな。
冬のはじまりはいつもいつも些細なことで気が沈んだりもしますが
こういうことがあると本当にありがたく、深呼吸。
今年一年、cartaに足を運んでいただいたみなさま
本当にありがとうございました。
あたたかくしてよいお年をお迎えくださいませ。
2015.12.31|日々の手紙
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