新しい「てくり」

新しい「てくり」が発売されました。

「なおす」を選ぶ。22号です。

本、椅子、樹木、ピアノ、馬具や革製品などが取り上げられています。
このてくりを読んで、そうか自分も店でも「なおす」選択をしていたんだな
これからもしていきたいという気持ちになりました。

20160904

この写真のてくりの隣に写っているのは、cartaで使っている器で
てくり22号で金継ぎでご紹介されている塗師の田代淳さんになおしていただいたものです。
金だったり、銀だったり、漆だけでだったり。器によって継ぐやり方を田代さんが
選んでいるのもとても好きで、帰ってくる器を見るたび嬉しくなります。
好きで使っていたものが、金継ぎによって器の佇まいや景色が変わり
普段の日々に新しいバランスを生み出します。
そういうことが楽しいなと思っています。

ちなみに奥にチラリと写っている椅子、こちらも昨年貼り替えたばかり。
20年くらい前にイギリスの古い家具を扱う代官山のお店で見つけた、赤い布が貼ってあった
古い三角の椅子。

(見つけた、と言っても厳密に言うとわたしではなく、一緒に見に行った友達が取り置きしていたもの。友達は結局、取り置き中に別の椅子を見つけてそれを購入、でもこの赤い三角の椅子が忘れられないという彼女はなんと「お願い、あの椅子はかがやさんに持っててほしい!他の人が持ったらほんとにかなしい!」と懇願してきた。一瞬ぽかん、としたけれど、いいかな、あの椅子は可愛かったし座り心地も良かったしと思い、わたしが買った。今に至る。彼女はこのことを覚えているかどうかは知らない。)

店のオープンの時に家から店に居場所を移して10年、だいぶくたびれていたのですが
気に入った布地を選び、メンテナンスもしていただき、ぐっと座り心地も良くなって
よみがえりました。
この布地はミナペルホネンのdopで、擦り切れたら別の色の布地が出てくるという
仕掛けがあります。
椅子の貼り替えをして気持ちよくなっただけでなく、また何十年か一緒に過ごす楽しみも
もらいました。

それから、店にはピアノもあります。
演奏会の前の調律の際は、その都度ピアノの内部の美しさに見とれます。
このピアノは縁あって譲っていただいたものですが、前の持ち主の方が
メンテナンスをちゃんとされていたようで、50年以上経っても現役です。
ピアノがcartaに来て初めての調律の時、調律師の方に
「この場所の空気に馴染んでいって、これからどんどんcartaさんらしい音になっていくと
思いますよ」
と言っていただいたのが忘れられません。

育った家で金継ぎされた器を使っていたから、とかいうことでは全然なくて
以前働いていた店がそういう店でした。
古い器や作家の器、大事に扱ってどんどん使う、割れたらなおす、また大事に扱って使う
という日常に居られたことに今更ながらに感謝しています。

そしていっとき、数年間熱心に通っていたお稽古事の中でも、なおして使う、今あるものをまた別の用途でも使う、時間を経てきたものに思いをはせる、時間をかけないとできないものがあることを知る、そんなことを感じたりしました。

ふと、色々思い返したり、改めて感じてみたり
22号オススメです。

 

2016.09.04|日々の手紙

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