昨日(12月11日)、ひょいと現れた安西さん。
今回の作品について三人でゆっくりお話しするタイミングがありました。
「おもう」というタイトルについて
事前に安西さんから今回の作品群は一字で表すなら「想」です。
と連絡をいただいていて、ふと頭に浮かんだのが
トルソーのある空間で
誰かのことを想ってみたり
自分のこれまでを振り返ったり
そして
自分の温かい魂が向かう先のことを
想って静かに決意したり
というイメージ。
そんな意味を込めて「おもう」というタイトルにしました。
すると安西さん曰く、
自分の窯芸のスタートは器だったんです。
今回は最初の頃に制作していた鉢や碗を、轆轤を使わずに
あえて手びねりで制作しました。
最近、茶道を経験する機会があって、茶道におけるお抹茶の
ひと碗ひと碗も目の前にいる相手のことを想って
静かに点てられる。
その点ではこの器たちも「おもい」をつなぐ道具なのです。
そして、今回自分の制作の原点である器を作ったことも
自分のこれまでを振り返って「おもう」ことにつながるなあ、と。
安西さんのトルソーはテラコッタの質感をそのまま生かした
淡い色合いの作品が多いのですが、今回は今までになかった
「黒いトルソー」があり、その点について尋ねてみると
この(黒い)トルソーは器と同じ土で制作していて
炭焼きで焼成する際に黒くなります。
トルソーはあえてこのまま墨色にしていますが
器の場合は再焼成することにより炭が燃えて、今回のような
肌色になります、とのこと。
例えば、床の間に掛け軸や野にある花を活けるように
いま、私たちが暮らす一角にトルソーがあると
そこに、ひそやかな意思が灯るような感じがします。
「さっき中津川の河原で見つけたんです」と
枯れた花をすっと花入に入れた安西さん。
それを目の前で見ていて
それぞれのおもい、渡したいな、と思いました。
2016.12.12|日々の手紙
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