あの日、2/21のcartaの時間

おとといの晩、メッセージが入っていて見てみると
「あの日のcartaで弾かせてもらったミュートピアノの音です」
haruka nakamuraさんからでした。

2月21日の夜に行われたcartaでの「冬夜の響き」。
ソプラノサックスの内田輝さんと、ピアノのharukaさんの小さな音の演奏会。
内田さんはご自身も鍵盤の奏者でいらっしゃいますが、ピアノの調律もなさいます。
その内田さんに診てもらったcartaのピアノ。
ちょっとした仕掛けでミュートピアノになりました。
ここまでは演奏会当日、cartaの営業時間前のこと。

11時になり、店がオープンするとふらりとharukaさんがやってきて
内田さんが調律したピアノに向かいました。
気づくと2時間近く、cartaに光が差している時間の間、harukaさんはピアノを弾いていました。
その間は普通に営業していましたので、偶然居合わせたお客さまも。
私たちも仕事をしながら、いつもよりも気持ちがよく動けるなあと感じていました。
きっとcartaとピアノとharukaさんとお客さまと、その時にしかない調和に満ちていたんだろうと思います。

「冬夜の響き」で内田さんがおっしゃった
「音を自分から聴きに行くのではなくて、身体をアンテナだと思って
そのアンテナに届く音を受けてみてください。身体の力を抜いて」
というのを意識せずにやっていたのかもしれません。
音を判断せずにいられるということはストレスがないのですね、きっと。

店を開けて、コーヒーを持って二人でカウンターに座って
harukaさんから送られてきた「あの日のcartaの音」を。
窓の外の歩く人や、飛び立つ鳥や、走る車など、目に入ってくるもの。
通り過ぎる車の音などの耳に入ってくるもの。
そしてharukaさんが録音していたあの日のcartaの音。
全てが一つになって、今この時間と再び調和していると思ったら
ここに座ったたった十数分で、それだけで「久しぶりに、休息をした」と感じました。

harukaさんが録音していたあの日の音には
cartaの営業時間内の音が全て入っていました。
コーヒー豆を挽く
食器を洗う
流れる水
パンをパンナイフで切る
ソーサーにカップやスプーンを置く
コーヒーを粉にしてフィルターに入れた後に容器を叩く
お客さまと一言二言交わしている声
ありがとうございます、という声
ドアが開く
お客さまが持ってきた本の包みを開ける
そのほか、いろんな音。

これらの音とharukaさんのピアノの音とが合わさっているこの録音は
とても心地よく、重心が丹田のあたりに収まります。
そして不思議なことが起こりました。
店にいるときの私たちを眺めている気分になったのです。
この音になっている今の自分たちの仕事、それを何年かここで続けていて今がある。
お茶を飲んで一息つく時に、音楽が気持ちよくあったらいいな。
音楽だけでもないしお茶だけでもない、その時の状況の中でどれも突出してなくて
でもとても自然で、ここでひと時過ごす時間がその人にとって余白みたいな時間だったらな。
そんな時間が毎日の中に少しでもあったらいいな。

harukaさんが送ってきてくれた「あの日のcartaの音」を聴いて
ふっと私たちに時間の余白が確かに生まれました。
私たちの知らないところで、ほんの少しでもこの場所が誰かの役にたってたらいいなと思っていましたが
もしかしたら、ひょっとしたら、ほんの少しは誰かの余白の時間のための場所になっているのかもしれない
と、初めて想像することが出来たのです。

コーヒーを飲んで、流れる音を耳にし、窓の外を眺め「休息をした」と感じたことで
続けて来たことに小さい小さいマルをつけてもらったような。
嬉しいなあ泣。

harukaさんはピアノを弾き終わり「これでピアノに慣れたかな」
そう言ってまたふらりと散歩に出かけました。
録音してたなんてね。
そして届いたあの日の音。それから嬉しい手紙。

ありがとう。
明日はあの日の音と一緒に過ごします。

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2017.03.10|日々の手紙

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