早春のこと

melonsoda

2018年ももう4月。
1月は寒くて寒くて、街も店もなんだか冷えすぎて、身体にも堪え
この冬は終わりが来るのだろうか、少し不安に過ごしていました。

2月は2014年から毎年開催している樋口佳絵さんの小さな個展「ねこの月、佳日◎樋口佳絵展」が始まって
ねこを抱いた時みたいに寒さが少し和らいだような気持ちに。
「あなたの猫さまロゼットおつくりします」という企画は全国からお申込みが届いて
PC画面を通していろんな猫さまを拝見、みんな愛されてるなあと何度も涙目。
ご注文くださったみなさま、ありがとうございました。
そしてドローイング作品をお求めくださったみなさまにも、ありがとうございます。
「ねこの月、佳日展」での樋口さんのお仕事は毎年ほんとうに素晴らしく
真っ直ぐに最善を尽くすことをいつも目の当たりにして、楽しくも気が引き締まる月でもあります。

そして3月。
チケットも早々に完売し、キャンセル待ちのお客さまに追加席もご用意した演奏会。
FOLKLORE feat.坂本美雨の盛岡公演。
赤レンガ館のキンと冷えた空気の中での演奏は演者の皆さま
お聴きのお客さまにとって、とても寒かったと思います。
この点はもっと何か策があったかもしれないなと反省しています。
申し訳ございませんでした。
それでもたくさんのお客さまが
「あの寒さも演奏を引き立ててたと思います」とか
「空気がより一層澄み渡って音楽に集中できました」とか
「あの時のこと全部が素晴らしくて忘れられません」とか
嬉しい感想を寄せてくださる方々が絶えません。
岩手銀行赤レンガ館と雨の音や車の通り過ぎる音や光、動く影
ここに居た体温を持ったわたしたちとFOLKLOREの3人と坂本美雨さんのうたごえ全部でできた音楽。
忘れられない演奏を届けてくださった美雨さん、harukaさん、内田さん、青木さん、ゲストの雄大さん
そしてこの日の音を作るために山梨の甲府から合流してくださった田辺玄さん。
ありがとうございました。
美雨さんと我が家のねこたちの間での密かなミッションも無事に遂行されたこともいい思い出。

まだ頭の中で音楽が鳴りやまぬうちに奈良の空櫁さんへの出張、「安比塗りと岩手もの」展。
安比塗りの漆器と岩手のいろいろを集めた展示でした。
暖かな空気の奈良は別世界かと思いました。
広く大きな空に守られているような、とても安堵感を覚えたのは
奈良が日本のルーツだからなのかな。
街で野良猫に出会うように鹿に出会えたり
奈良の方々の話す言葉にユーモアを感じたり
修学旅行での奈良とは全く別の街。
空櫁の五井さんのすんばらしいおもてなしと相まって
とっても好きな街になりました。
cartaと同じオーブンがあったのでやれるかな?と思った丸パンのサンドウィッチの提供。
もちろんいつものように漆のお椀でスープも一緒に。
二日間通った東大寺二月堂。
大きな松明の炎。
暗闇から覗く蝋燭の光や練行衆の声明、木靴で走る音、お香の煙。
今年の3/11は盛岡ではなく、奈良で迎えたのですが
この二月堂での一連は1200年以上続く、鎮護国家、天下安泰、風雨順時、五穀豊穣、万民快楽を願う行事だと知り
なるほどと思い至りました。
深夜の二月堂の隣でハナをすすりながらうどんを食べてる時に
くるみの木の石村さんにばったりお会いできたのも旅感を盛り上げました。
かつてcartaにいらっしゃったのはたぶん10年くらい前のこと。
わたしが石村さんに書いた盛岡のcarta近辺の地図がその後石村さんの本に載ってるのを見つけた時は
石村さんからの何よりのエールだと思いました。
10年前の帰り際「大丈夫よ」と手を握ってくださったことを
「そうだったわよね?」と久しぶりにお話しできて嬉しかったです。

空櫁さんにいらしてくださったお客さま
駆けつけてくださった京都の今宵堂さんや
mama!milkの恒輔さん、青木隼人さん、makaの幸枝さん、友人のrere
すぐ近くに現場があったと立ち寄ってくれたアキアヤちゃん(奇跡)
そしていつも盛岡へ帰省されてる時にcartaにいらしてくださるお客さまに
奈良・空櫁でお会いできたこと、とても嬉しかったです。

丸パンが焼けるからそれをサンドウィッチにしよう
サンドウィッチにはスープを一緒にしよう
スープの器はあったかいものも手でもてる漆のお椀にしよう
そう、岩手は浄法寺で漆が取れて、岩手でお椀が作られているから岩手のものにしよう
そう決めてずっとしてきたことと
そしてお声がけくださった日野明子さんと
いつもcartaのお椀を「ツヤツヤ」と褒めてくれる塗師の田代淳さん。
お椀から繋がったご縁がわたしたちを奈良に連れて行ってくれました。

奈良には住んでもいいくらいだなあなんて気持ちで盛岡に戻り
まだぽやぽやしていたのですが
お隣のCygでの「雲は透ける、ペーパーナプキンにあこがれて」のヤング旋風を浴び
ありがたく巻き込まれ、スペシャルメニュー「フラウラ星雲」を創作。
たくさんのお客さまにお運びいただきました。
千秋楽の劇中では「ワレワレハ フラウラ星雲カラヤッテキタ フラウラ星人だ」という台詞が!
嬉しいサプライズ、笑いが止まりませんでした。
公演もいろんないろーんなことを感じる時間でした。
ちなみにフラウラとはギリシャ語で「いちご」。
あったのかなかったのかわからないような食べ物のイメージ。
ミルクゼリー、いちごのムースの二層のデザートの上に雲を。
この公演は星々が集まって出来た星雲のようだとも思って名前をつけました。

この「雲は透ける、ペーパーナプキンにあこがれて」の期間中に「けもの」盛岡公演2daysがあり
初日のけものシティポップライブのドリンク提供でお手伝いさせていただき
そして翌日のけものと柴田元幸さんと菊地成孔さんの朗読を堪能したことも3月(!)。
メロンソーダと赤いさくらんぼを持って行けて本当によかったなと思います。

こんなに長く書くつもりは全く無かったのですが
cartaを戌年に始めて、今年も戌年。
そっか、そっかあ、なるほど、そうかあ!と思うことが多く、ヘンな言い方ですが
この3月はいままでの関わりが連れてきてくれた「至った場所」を初めて感じ
<心象:流れる雲、草原の向こうに灯台>
そこから新たな始まりを思ったというのを書いておきたいという気持ちだったのかもしれません。

演奏会のリハ中に滅多に連絡のない兄から電話があり
ライブを見届けられないかもしれない
奈良の出張もお断りしなくてはならないかもしれない
と思いながらも、すとんすとんと目の前の襖が開き、進んで、いまこうして日常に居ること。
リハ中の音楽にどれだけ支えられたか、そして始まった公演中の音楽にどれだけ支えられたか。
演者の皆さんにはお伝えしてはいないけれど
あの優しさと温かさと愛のつまった音楽に
心からありがとう、と思っています。
だから打ち上げで飲んだお酒は正直に言うとおぼろげな記憶。
また盛岡で奏でてほしいな、そしてみんなとまた乾杯したいな。

いろんな人と出会った早春。
桜が待ち遠しいです。

2018.04.03|日々の手紙

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